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お客様インタビュー 高エネルギー加速器研究機構様client_interview_02

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今回は、オータマの長年のお客様である高エネルギー加速器研究機構(KEK)のつくばキャンパスを訪ね、次世代加速器といわれる「エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac:ERL)」の開発に携わり、試験加速器であるcompact ERL(cERL)を設計段階から作りあげた古屋貴章教授にお話を伺いました。



◆物質や生命の根源を解き明かす

―高エネルギー加速器研究機構(KEK)とは、どのようなところですか。

KEKでは宇宙の起源、物質や生命の根源を解き明かすために粒子加速器(以下加速器)という装置を使い、自然界に働く法則や物質の基本構造などを探求する基礎研究を推進している大学共同利用機関法人です。素粒子原子核研究所、物質構造科学研究所、加速器研究施設、共通基盤研究施設、量子場計測システム国際拠点、J-PARCセンターが連携して研究を行っています。 KEKのつくばキャンパスと東海キャンパスにはSuperKEKBやJ-PARCをはじめとして多くの加速器があり、日々、さまざまな実験を行っています。



KEKつくばキャンパス
KEKつくばキャンパス (C)KEK


◆身近にある加速器

― 加速器とはどのようなものですか。

加速器とは、電子や陽子のような粒子や、原子から電子をはぎ取ったイオンなどを集めてビームにし、高圧の電気の力で加速する装置です。加速器には、加速した粒子同士を衝突させる「衝突型」と粒子を標的に当てる「固定標的型」があり、さらにビーム軌道が直線の「線形加速器」と、円形に近い「円形加速器」にも分けられます。つくばにある「SuperKEKB加速器」は、ほぼ光速の電子と陽電子を正面衝突させる衝突型の、周長3㎞という日本一大きい円形加速器です。

加速器は1930年代にその歴史が始まって以来、科学技術の目覚ましい発展に大きな貢献をしてきました。物質や生命現象の理解になくてはならない研究手法を提供し、日本でも2008年のノーベル物理学賞の受賞理由となった小林・益川理論の証明やニュートリノ振動の解明など、素粒子の理解を深めるための重要な成果を生んでいます。

一般の方はあまり耳にしたことがない装置かもしれませんが、実は私たちの身近なところにも加速器は使われています。例えばレントゲンやCTスキャン、PET検査などの診断・検査も加速器の応用とみなすことができます。これとは別に、国内の主な加速器は1,700台くらいといわれておりますが、その用途のほとんどが医療関係で、X線や粒子線を照射するがん治療などで使われています。また、加速器で作ったX線は、港湾・空港の荷物検査、害虫駆除、考古学での年代測定、非破壊検査など、多くの用途があります。


SuperKEKB加速器 富士実験棟トンネル内の直線加速部
SuperKEKB加速器 富士実験棟トンネル内の直線加速部 (C)KEK/Shota Takahashi


◆高輝度放射光を作る次世代加速器ERLとオータマの磁気シールド

― 古屋先生のチームが携わったcompact ERL(cERL)についてお伺いします。

cERLは、大強度かつ高品質の電子ビーム生成を目指した「エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac:ERL)」という次世代放射光施設に必要な基本技術を獲得するために建設された、およそ90mの試験加速器です。ERLは、放射光を生成することによって広がってしまった電子ビームからエネルギーを回収して後続の細くきれいなビームの加速に再利用することで、高輝度の細い光を持続的に作り出す加速器で、この主加速装置には「超伝導加速空洞」が不可欠です。私のチームはこの超伝導加速空洞の開発を担当し、阪井寛志教授らとともに2006年から設計、製作、性能試験と研究開発を進め、2009年にERLの技術検証用加速器としてcERLの建設を開始しました。ERLを実現するためには多くの技術を開発しなければならず、そのためにKEKでは小型のERLを作ることから始めたのです。加速器をゼロから作り上げるような機会は人生にそうあるものではありません。大変貴重で面白い経験を得ることができました。

オータマさんには、cERLを支える中核技術のひとつであるこの超伝導加速空洞の磁気シールドの製作でお世話になりました。電子の加速とエネルギー回収を行う超伝導加速空洞はcERLの心臓部ともいえる装置です。空洞を摂氏マイナス271度に冷却して超伝導状態にすると電気抵抗、つまりは電力損失が常伝導の空洞に比べて10万分の1に減少するのですが、そのナノオーム級の小さな電気抵抗を実現するのに技術が要ります。その邪魔をする要因として、磁場のトラップは大敵です。外部磁場は空洞性能を著しく低下させる要因ですから、そのような極低温下でも機能する磁気シールドが必要でした。磁気シールドの製作に取りかかったのは2012年、当時のオータマの担当者には磁気シールドはどんな形状がいいか、どう組み立てていったらいいかなど、さまざまな相談に乗っていただきました。もう12年も前になりますが、オータマさんは、私のシビアな要求にも真摯に対応してくださったのを覚えています。

cERLは2013年にビーム運転を開始し、2017年からは産業応用利用を念頭に置いた研究開発を進めています。応用研究としては、ERL技術による次世代半導体製造のための大強度光源の開発、次世代の超伝導加速空洞の開発、電子ビームの照射による、核医学薬剤の99Moの高効率生成、アスファルトの長寿命化、木材照射による新素材のナノセルロースの高効率生成の研究などがいま進められています。


古屋教授

磁気シールドの筐体を組み立てる古屋教授(2012年)

中の様子

中の様子

cERL全体像
cERL全体像


次世代加速器光源イメージ

次世代加速器光源イメージ (C)ERLoffice

次世代加速器

電子銃(緑)から入射されたビーム(青)は四角で囲まれた空洞部で加速されて(赤)一周し、再び空洞へ戻って元のエネルギーまで減速されてビームダンプ(黒)に吸収される。回収されたエネルギーは次の新しい入射電子の加速に使われることで、加速器には絶えず新しいきれいな電子が周回することになる。

超伝導加速空洞の説明をする阪井教授
超伝導加速空洞の説明をする阪井教授(KEK加速器研究施設 応用超伝導加速器イノベーションセンター教授/
超伝導加速器利用推進チームリーダー/博士(理学))


◆世界との戦いに挑む

― 今後の目標を教えてください。

いま世界では、最先端の高エネルギー加速器の開発にしのぎを削っています。時代から取り残された加速器は必要とされません。私たちは特徴ある加速器の建設や、データ収集と解析に必要な技術や装置の開発、制御技術を集約して世界と競っていく必要があるのです。加速器の開発はその国の科学技術のレベルを示すものであり、生き残りをかけた戦いです。

日本が加速器の先進国であり続けるために、高いエネルギーや大強度など、さらに高度な性能を持つ加速器を開発し、科学や応用技術の発展に貢献していきたいと思います。



超伝導加速器利用推進チームのみなさん
超伝導加速器利用推進チームのみなさん(左から阪井教授、古屋教授、植木竜一助教、増澤美佳教授)

― ありがとうございました。

<参考サイト(外部サイト)>
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2010/mayjun/jisedaikougen.html
https://www2.kek.jp/proffice/2011-2020/ja/newsroom/2014/04/16/1600/
https://www2.kek.jp/casa/cERL/ja/index.html(超伝導加速器利用推進チームhomepage)

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)

加速器科学をはじめとする基礎研究を牽引するとともに、大学共同利用機関法人として国内外の研究者に共同利用の場を提供している。また、総合研究大学院大学の基礎組織として、先端的研究分野の開拓を担う人材を養成している。
https://www.kek.jp/ja/ (外部サイト)
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