こちらをご覧ください。
一般名称 | 初(比)透磁率 | 最大(比)透磁率 | 最大磁束密度 | 保磁力 |
---|---|---|---|---|
78%パーマロイPC | 60,000 | 180,000 | 0.72T | 0.8A/m |
45%パーマロイPB | 5,000 | 50,000 | 1.55T | 12A/m |
電磁軟鉄SUY | - | 13,000 | 1.65T | 50A/m |
冷間圧延鋼SPC | - | 5,500 | 1.3T | 90A/m |
永久磁石として使用するため磁性材料に大きな磁界を与え、磁気エネルギーを貯えさせる作業が着磁です。このためには磁性材料が与えられた磁界を貯えやすい構造を持っていなければなりません。磁性材料は磁区とよばれる小さな単位の集合(磁化の集合)で、その中でも永久磁石材料は、いったん磁化したら外部の磁界によって磁区が動きにくい構造をしています。このための指標が保磁力(Hc)で、この値が大きいほど磁区が動きにくく強い磁石になります。
パーマロイは永久磁石(硬磁性材料)とは異なり、軟磁性材料の一角を占め、特に高透磁率材料とされるものの代表で、磁区が極めて動きやすい構造をしていることが最大の特徴です。すなわち、大きな外部磁界を与えて磁化しても、磁界を零に戻せば磁化を持たなくなります。保磁力Hcが極めて小さいためです。
高透磁率材料の理想は保磁力が零になることですが、実際には零とはなりません。従って、わずかに帯磁し、これが維持される場合があります。帯磁したパーマロイの磁化を除く処理は脱磁あるいは消磁と呼ばれ、必要に応じて行われます。
パーマロイが直接的に磁気を反射することはありません。パーマロイは磁気を通しやすく集めやすい材料です。これが高透磁率材料です。
外部の電磁界あるいは電磁波(つまり電界と磁界の双方が場として、波として印加される)の影響と、対象材料によって磁界への対応のモードが変化します。たとえば周波数30MHzは電磁シールドの領域ですが、この帯域では電磁波は導電性の金属材料で反射されます。さらに高周波数、1GHz領域では、交流磁界で磁化されたときのエネルギー損失が大きな材料によって電磁波は吸収され熱エネルギーに転化します。
パーマロイが真価を発揮するのは、1Hzやそれ以下の極低周波数から商用周波数→200Hzまでの、主に磁界が問題となる低い帯域における磁気シールドです。
上から見た磁気の流れ
磁気の流れ、磁界ノイズから機器を守るため、図のようにパーマロイで磁気シールドルームを作ったときを考えます。パーマロイは空気中または他の金属と比較して、桁違いに磁気を通しやすい(高透磁率の)ため、磁気のほとんどがパーマロイの中を通ってしまいます。その結果、室内は磁気が遮蔽(シールド)された状態となり、中にある機器を保護することができます。このように反射や吸収ではなく、シールドしたい箇所から磁気を迂回させることによって保護することが磁気シールドの原理です。
パーマロイの主成分は、Ni(ニッケル)とFe(鉄)です。NiはFeに比べ電気化学的に貴で錆びにくい性質を持ちます。パーマロイの耐食性はNiの含有量が高いため、炭素鋼や鉄よりは錆びにくいと言えますが、不錆ではなく(ステンレス鋼の代表格である18Cr-8Ni合金ほどではなく)、酸化抵抗はケースによって違います。
錆は金属表面の酸化物、水酸化物で、一定の状態ではない場合が多く、定量的に示しにくいのですが、錆びれば本来の磁気的性質は劣化します。しかし、パーマロイは前述のようにNi含有量が高く、通常の大気雰囲気では錆びにくい材料です(耐候性が高い)。
パーマロイは通称ですが、世界的に通用する名称です。軟磁性材料の特に、ニッケルNiを35~80%含むニッケル‐鉄合金の総称です。
1914年、ベル研究所のG.W.Elmenが、鉄Feとニッケルの合金でケイ素鋼(電磁鋼板)より優れた高透磁率の合金を発見、これをパーマロイ(Permalloy:透磁率permeabilityと合金alloyをかけた名前)と命名したのが最初です。さらに1923年、Elmenはこのパーマロイを熱処理することで、さらに飛躍的に透磁率を高めることを発見。当初はFe-Ni2元系でしたが、今日に至るまで幾多の改良・改善がなされ、モリブデンMo、銅Cu、クロムCr等を含む多元系のPCパーマロイは最大(比)透磁率200,000を超える磁気特性を有します。材料メーカーによって多くの種類があります。
正確な名称は日本工業規格JIS C 2531における「鉄ニッケル軟質磁性材料」で、このJIS C 2531は 国際電気標準会議のIEC 60404-8-6同じく60404-6を元にしています。
欧州・米国の一部メーカーによって使用されている名称にMumetalがありますが、本来はCu添加型、CuーCr添加型の80Ni系に名付けられたものですが、拡張して使われており、ほとんどPCパーマロイと同じと見て差し支えありません。
JIS C 2531 における「鉄ニッケル軟質磁性材料がパーマロイの規定ですが、PB(50Ni系)、PC(80Ni系)、PD(36Ni系)、PE(角形ヒステリシスの50Ni系)、PF(60Ni系)があります。
実用的に多く使われ、当社で在庫しているのは、PCパーマロイ(80Ni系)、PBパー マロイ(50Ni系)です。
パーマロイは、低保磁力かつ高透磁率であることから、前掲のように、
(1)磁気シールド効果が高いこと、集磁作用が大きいこと
(2)微細な入力(磁界)対比で出力(磁化)が大きいこと
(3)交流の抵抗(電圧と電流の比)を高める効果
などがあります。
(1)は磁気シールドルーム、磁気シールドチャンバー、磁気シールドケースなど、(2)は磁気センサーなど、(3)は各種インダクター(コアに巻線を施したコイル)に応用されています。 なお、周波数は1Hzやそれ以下の極低周波数から、商用周波数→200Hzまでの比較的低い帯域で有効です。
こちらをご覧ください。
こちらをご覧ください。
種類 | 板厚(mm) | 幅(mm) | 長さ(mm) |
---|---|---|---|
PC | 0.1 | ~450 | Coil |
0.2 | ~350 | Coil | |
0.35 | ~450 | Coil | |
0.5 | ~640 | Coil | |
0.8 | ~640 | Coil | |
1.0 | ~640 | Coil | |
1.2 | ~450 | 1,350 | |
1.5 | ~640 | 1,500 | |
2.0 | ~640 | 1,500 | |
3.0 | ~640 | 1,500 | |
※上記以外のサイズ及び丸棒や角材はお問い合わせください。 | |||
PB | 0.2 | ~230 | Coil |
0.5 | ~310 | Coil | |
0.8 | ~510 | Coil | |
1.0 | ~350 | Coil | |
1.5 | ~340 | 1,500 | |
2.0 | ~350 | 1,500 | |
※上記以外のサイズ及び丸棒や角材はお問い合わせください。 |
こちらをご覧ください。
パーマロイは、熱処理されることによって、磁気的性質、機械的性質がコントロールされます。高い透磁率を引き出すための磁性焼鈍と加工性を高める歪取り焼鈍があります。
磁性焼鈍は、磁区(磁化の単位である原子の磁気モーメントの向きのそろった小区域のこと)の動きの妨げになるものを除去し、外部磁界による磁壁の移動、磁区の回転を容易にして、軟磁性の向上、とりわけパーマロイの最大の特徴である高い透磁率を引き出すために不可欠な処理です。1,000℃以上の高温で、還元性の水素雰囲気で実施されます。オータマ製品のほとんどが磁性焼鈍状態で出荷されます。
歪取り焼鈍は、再結晶温度以上の加熱で再結晶することにより、加工履歴、熱履歴による残留応力を除去して機械加工や塑性加工をし易くする処理です。磁性焼鈍よりは低い温度でなされます。
水素には還元作用=脱酸素の作用があります。すなわち、材料表面の酸化皮膜や内部の微細酸化物の(不純物としての)酸素を水素と結合させて除去し、材料を清浄化します。これにより、特に低周波での磁壁移動、磁区の回転を容易にし、軟磁性の向上を図ります。
MmOn(金属酸化物)+nH2(水素)→mM(金属)+nH2O(水蒸気)の反応が進み、脱酸されます。 また、加熱および冷却時に処理品に効率よく熱を伝えるための熱媒体としても水素は有効です。
こちらをご覧ください。
子会社の株式会社 e・オータマにて承ります
直流(DC)磁界と交流(AC)磁界と直流(DC)磁界変動の違いは?
直流磁界(DC)とは、磁石や着磁した鉄骨などから出る磁気のように常に一定で時間変化しない磁界、あるいは穏やかな変化を伴っている場合でも直流磁界として扱うことがあります。地球の持っている磁界(地磁気)も直流磁界です。
交流磁界(AC)とは、一定周期で方向も大きさも変化する磁界です。コンセントに流れている電気は方向が1秒間に50回あるいは60回反転します。これを交流50Hz(60Hz)といい、この電気に伴って発生する磁界も同じように1秒間に50回、方向と大きさが変化するため、50Hzの交流磁界ということになります。
当社では、電車・エレベーター・車などの数Hz以下の極低周波の変動を直流磁場変動と呼んでいます。
センサーのコアに用いられる製品は衝撃を受けてわずかに特性が変化することがあります。しかし磁気シールド用途では、これほど微小領域を問題にしないため弾性変形内であれば衝撃を許容することも一般的です。
磁気シールドの性能は、基本的には材料の透磁率μに比例します。つまり高透磁率の材料が使用されます。
MRIや電源トランスのような強磁界を発生する機器の磁気シールドでは、シールド材料は強磁界にさらされます。磁気シールド材料としては、強磁界でも磁気飽和しないように飽和磁束密度Bsが大きく、かつ断面積が大きくとれる材料が適しおり、Bsが大きな純鉄の厚板や電磁鋼板等が使用されます。
電気機器からの漏洩磁界、電流送配電線からの交流磁界、都市磁気雑音、環境磁界など、外部磁界が比較的小さな領域では、軟磁性に優れた高透磁率のPCパーマロイが多用されます。用途により、PBパーマロイ、ナノ結晶軟磁性材料、あるいはアモルファス磁性材料を使用することがあります。
(周波数、対象磁界、施工性などによる。)
こちらをご覧ください。
お客様にて磁気シールドの必要性能が検討できる場合はその性能で仕様を取り交わします。あるいは、お客様の求める磁界環境・条件をヒアリングし、現状の磁界環境を実測して必要な磁気シールド性能を提案させていただきます。